認知症の予防と改善に、音読が効果的だとされています。
実際に、介護の現場で音読の学習療法が行われており、私も職員として高齢者に実践してもらっていました。
認知症の高齢者が簡単な計算と音読を毎日やったら、回復が見られたという研究があります。
このページでは、まず、私が以前勤めていたデイサービスで実践していた音読学習についてお伝えします。次に認知症の人になぜ音読が有効なのかについての研究をご紹介しています。
そして、最近始めた義母の音読についても書いてみました。
認知症の人の音読。デイサービスでの試みとは?
私が体験した、くもん学習療法
私が以前勤めていたデイサービスでは、くもん学習療法というのを取り入れていました。この学習法については、こちらで詳しく書いています。
→ 認知症予防に計算は効果がある?義母と一緒の脳トレをご紹介
計算と音読をすることで、脳が活性化され、認知症の改善および予防に効果があるという考えのもとに、教材が用意されていました。
音読の教材は、高齢者が興味をもつような内容の文章で、たとえば年中行事や昔の道具、食べ物、遊びなど、いろんなジャンルに及びます。
文章の長さは、その人がすらすら読むことができる長さです。認知症が進んで、文章を読むのが難しいと思われる人には、ひらがなだけの短い文章や、単語だけが書かれています。
口の中でもごもご読む人がけっこう多いのですが、声をしっかり出して、できるだけはっきり読むように、職員が促します。
音読の効果と感想
音読が終わったら、教材の内容について雑談します。「〇○さんは子供のころ、お正月はどんなふうに過ごしたんですか?」「おもちを家でついたんですか。きっとおいしかったでしょうね」などと会話を広げていきます。
短い時間ではありますが、楽しく学習したという実感を持つことができ、笑顔で学習を終えることができます。
この学習は有料で行っていたため、一部の利用者さんしか体験できません。教材がなくても、身近な文章を読むという試みができたらいいなと、その時に感じました。
この学習療法を取り入れているデイサービスや特別養護老人ホームなどは、全国で少しずつ増えています。認知症が改善したというケースも多く報告されています。
私が在職していた3年間のうちでは、残念ながら認知症が改善したというケースは確認できませんでしたが、もしかしたら、認知症が進むのを予防することはできていたのかもしれません。
音読が有効な理由は?
脳トレ川島隆太先生の研究
認知症の人に音読が有効であると唱え、多くの教材を開発しているのは、東北大学未来科学技術共同研究センター教授の川島隆太先生です。
そして、公文式学習を高齢者にも応用させ、教材を作りました。
なぜ音読が認知症の症状を改善させることができるのか。川島教授は、このように説明します。
脳の神経細胞が働くと血流がよくなります。難しいことを考えている時は、血流増加は脳のわずかなエリアでしか起きないのに、音読をすると、前頭葉(ぜんとうよう)をはじめ、さまざまなところに血流増加がみられます。
驚くことに、楽しいビデオゲームに熱中している時よりも、音読中の方がまさっているというデータがあるのです。
認知症の高齢者に音読と簡単な計算を毎日行ってもらったところ、回復が見られたのだそうです。
楽しんで継続することが大事
ただし、あくまでも本人が音読を嫌がるようなら、無理強いするのはよくありません。楽しんで実行してこそ、効果があるのです。若いころから活字を読むのがあまり好きではなかった人が、高齢になって、突然音読を強いられたら、苦痛以外の何ものでもありません。
楽しく音読することができるよう、本人の興味のありそうな教材が見つかればいいですね。そして少しずつ継続することが大事だと思います。
私がデイサービスで行っていた学習は、毎日行われたものではありませんでした。1人の利用者さんがデイサービスに訪れるのは、多くても週に3日でしたから。
もしかしたら、毎日欠かさずに実践していれば、明らかな効果が見られたのかもしれません。
とはいっても、介護する家族にもいろいろ都合がありますよね。あまり負担にならないように、できる範囲でやる、ということでよいかと思います。
認知症の義母、音読を開始
認知症が少しずつ進み心配になる
本を読むのが好きだった義母は、図書館で借りた大きな活字の時代小説を、よく読んでいました。
時々、本の文章の一部を声に出して読んでもらうことがありましたが、ほんの一時期で、私が面倒になって、やめてしまいました。
ここ3年くらい、もう本を読む気力も知力もなくなった義母に、私は本を借りてくることをしなくなり、時々、私が童話や絵本を読んであげるだけになりました。
認知症が少しずつ進み、日中何もせずにボーッとしていたり、寝る時間が長くなったりすると、ますます認知症が進んでいくようで、心配です。
音読の教材に童話を使う
そこで1カ月くらい前に、ふと音読をやろうと思い立ちました。でも、義母に読めるものがありません。義母の視力はどんどん落ちて、相当大きな文字でなければ読むことができません。
絵本の文字さえ、小さくて読めないのです。
そこで、私はノートに昔話や童謡を書いて、読んでもらうことにしました。「うさぎとかめ」「浦島太郎」「花咲かじいさん」など、ネットで簡単なあらすじを調べ、ノートに大きな字で書いていきます。
声に出して読んでもらいますが、声が小さく、滑舌も悪く、よく聞き取れません。こんなに読むのが難しいとは思いませんでした。
幸い、義母は昔からよく本を読んできたので、漢字はスラスラ読めます。
私も義母と一緒に大きな声で読んだり、少し離れた所に座って、「ここまで聞こえるように読んでね」とお願いしたりしました。すると、だんだん声が出るようになってきました。
音読の後は、一緒に童謡を歌って、終わります。
1週間に1、2回。いつもスムーズにできるわけではありませんが、楽しい時間になっていると思います。終わると、体が熱くなっているのを感じます。
私はけっこう昔話の内容を忘れていますし、童謡も1番しか知らないので、この試みは、私にとっても刺激のある有意義だといえます。
もう少し回数を増やし、できたら毎日少しずつでも続ければよいというのは、わかっているのです。なんとか時間を作り出そうと思います。
何か変化が現れたら、ご報告しますね。
まとめ
認知症の人にとって、音読は有効であるという研究報告があります。
音読により、脳の神経細胞が働き、血流を増加することにより、認知症が改善するというのです。
音読の教材を探して購入しなくても、簡単な内容の本や絵本を読むことでもよいと思います。
毎日少しずつ実践することで、認知症の改善や予防が期待できるのだそうです。ただ、あまり結果を期待しすぎると、そうならない時にがっかりします。
本人と一緒に私たちも音読を楽しむつもりで、気楽に取り組んでみてはいかがでしょうか。