アルツハイマー型認知症の進行は個人差がありますが、ゆっくり悪化していくといわれています。
現在はまだ治すことはできないけれど、症状を遅らせることができる薬があります。
私の父は、アルツハイマー型認知症でした。本来なら、もっとゆっくり病気が進行して、家族みんなで介護するはずでした。ところが、母の死がきっかけで、病気が急激に進行しました。
このページでは、父のアルツハイマーの症状がどのように進行したかをまとめています。そして、なぜ病気が急激に進行したのかについても考えてみようと思います。
父のアルツハイマーの進行の状況
母の死の直後は中期症状だった
アルツハイマー型認知症には、いくつかの段階があります。その分類のしかたにはいろいろあるのですが、単純に分けると、以下のとおりです。
① 初期症状
② 中期症状
③ 後期症状
父は、アルツハイマー型認知症と診断されてから少しずつ症状が進み、2013年のお正月に私が帰省したときには、中期症状にいたと思います。
私や子供たちのことは認識できるけれど、久しぶりに会った子供たちの名前が出てきません。食事も排泄も普通にできるけれど、何を食べているのかわからない時がありました。排泄はすべて自力でできており、おむつはいっさい使っていませんでした。
足腰はしっかりしており、杖もシルバーカーも使っていません。
父の症状が進行するにつれ、母は大変な思いをしていましたが、近くに住む弟の家族がサポートしてくれていたので、これからの介護の見通しが立たないという状況ではありませんでした。
ところが、私と子供たちが両親のもとから自宅に戻ってから6日目に、母が急に亡くなってしまったのです。心臓に疾患があり、入浴中に発作を起こしたようです。
この時はまだ、父の症状はそれほどひどくなかったので、告別式にも参加でき、親戚の人たちとも会話できました。
半年後には後期症状に
父は、この半年後にはかなり症状が進み、私のことが誰だか認識できなくなってしまいました。アルツハイマーの後期症状です。
母の死により、弟の家族が父と一緒に住むことになりました。認知症の父を一人にしておくことはできません。
弟と義妹、息子2人が引っ越してきました。
今まで応接室だった部屋にベッドを置き、父の荷物を運んで、そこが父の部屋になりました。どこからも様子を見に行きやすく、トイレにも近いので、ぴったりの場所です。
日中はリビングで過ごすことが多かった父。それまでの掘りごたつは物をよく落とすからという理由で、足を伸ばして入るこたつに替えました。
父と母が住んでいた、あまり片づいていない家は、短期間のうちに、きれいに片づけられた家に変身しました。
急激に環境が変わると認知症が悪化することが多いとはよく聞くことなので、若干の不安はありましたが、何よりも、弟夫婦に対する感謝の気持ちが強かったので、私はその不安を口にすることはできませんでした。
施設入所にいたるまで
一人でトイレに行くことができていた父が、失禁するようになり、おむつを使い始めました。弟と義妹が交代でおむつ交換をしてくれます。
食事、入浴、着替えなども手助けが必要になり、弟も義妹もへとへとの状態に。
そしてある時、父が義妹に暴力をふるったという連絡が入りました。暴言も吐いたそうです。その後、そんなことが何度か続きました。
このころから、施設の入所を考えるようになりました。私は父のことはすべて弟夫婦に任せていたので、異議を唱えるつもりはありませんでした。父にとってはその方がいいという思いもありました。
まずはショートステイを続けて利用するという形から始め、その施設の空が出たところで、入所ということに。
父はその時すでに立って歩くことができず、車椅子に座るようになっていました。
父のアルツハイマーはなぜ急激に進行したのか
私たちが考えていた父の介護
母の一周忌は、弟の家族と私の家族だけで行いました。
自分からは何もしゃべらない父。表情もありません。父は、こんなに短い間に、家族のことも認識できなくなってしまいました。
母の死の直後、父と私は抱き合って一緒に泣きました。それなのに、もう母のことも思い出せないのです。こんなに悲しいことはありません。
父はとても穏やかで優しくて、孫をよく可愛がり、孫たちも父のことが大好きでした。それが、もう孫たちにほほえむこともできないなんて。
アルツハイマー型認知症は進行する病気です。でも、こんなに早く進行するとは、誰も予想していませんでした。
弟は、母が元気なころ、父の介護用ベッドをどこに置くか、どのように介護していくかを一緒に話していたそうです。
私は遠くに離れていてほとんど父の介護には介入していませんでしたが、時々両親に会いに行くのを楽しみにしていました。
父の症状が悪化した理由は?
父のアルツハイマーの症状がなぜ急激に悪化したのか、考えてみました。
まず、配偶者を亡くすことによるストレスも、認知症の悪化の原因になっていると思います。母がずっと病気で寝ていたというのなら、心の準備ができたかもしれませんが、突然逝ってしまったので、父はそのことを受け入れることができなかったのでしょう。
そして、環境の変化です。同じ家に住んでいるとはいえ、自分の部屋が別のところに移りました。家の模様替えもなされ、それまでとはイメージの違う家になりました。
父の頭は、この変化に対応できなかったのではないかと思います。
父は穏やかに亡くなった
父は施設で4年余りを過ごし、今年1月に亡くなりました。最期の時の顔は、とても穏やかでした。
最後の何カ月は、1日をほぼ寝て過ごしました。食事は、介助してもらって、時間をかけて食べていました。
父が入所してからずっと、義妹が週に2、3回、父のもとに通ってくれていました。だから、義妹のことだけはわかっていたようです。
父のアルツハイマーの症状については、また別の機会にお伝えするつもりです。
まとめ
アルツハイマー型認知症ではありましたが、中程度の症状で、家族に助けられながら日常生活を送っていた父が、母の死をきっかけに、症状が急激に進みました。
母の死のショックと、環境が急に変わったことによる混乱が原因しているのではないかと思います。
でも、あの時は皆が精一杯動いていて、それ以外の選択肢がありませんでした。弟夫婦は本当によく父のことをやってくれているので、感謝の気持ちしかありません。
認知症の人の症状はそれぞれに異なります。介護する家族の状況もさまざまです。認知症の進行を少しでも遅らせたいと思わない家族はいないと思いますが、本人の病気のことだけを考えることができない時もあります。
いろいろ考えて決めたことなら、その後何が起こっても、くよくよ悩むことはないと思います。本人はきっとわかってくれていますから。