高齢者の「飲み込みにくい」という症状に気づいたら、できるだけ早く対策を考えた方がいいでしょう。
飲み込みにくさは急に起こるものではなく、少しずつ症状が現れてくると思います。そのまま放っておくと、誤嚥性肺炎を起こすことも。
このページは、私の義父の嚥下に関する問題を取り上げています。もし、もっと早く義父の嚥下障害に気づくことができて、何らかの対策を講じていたら、義父は誤嚥性肺炎を起こすことはなかったと思います。
そして、嚥下障害の症状と治療の必要性について、まとめています。
あなたが介護する人が、だんだん食事に時間がかかるようになったとしたら、それを嘆くだけではなく、今できることをやっていきませんか?
【義父の誤嚥性肺炎、そして経鼻経管栄養へ】
義父は、平成5年の1月に、肺炎で入院しました。高熱が出て、意識が朦朧として、幻覚を見て、うわごとを言っていました。
なんとか命をとりとめ、点滴が取れそうだというとき、「おかゆを食べてみましょう」と医師に言われました。食べられるようになったら、退院できるというのです。
義父はおかゆをほんの何口か食べ、誤嚥性肺炎を起こしました。高熱が続き、、退院の日が延びました。
次に食事を試すときは、さらに慎重でした。今度はヨーグルトを食べました。やはり高熱が出ました。再び誤嚥性肺炎です。
そうこうしているうちに、義父は歩けなくなり、ベッドに座ることもできなくなり、寝たままで過ごすしかなくなりました。
口からものを食べることは無理な状態になり、鼻から栄養を摂る経鼻経管栄養になりました。
入院前は要介護2でしたが、退院したときは要介護5になっていたのです。
【義父の「飲み込みにくさ」に気づいてあげられなかった】
なぜ義父は、経鼻経管栄養になったのか、その時は深く考えませんでした。
しかし、ある時、夫と話していて、気づいたのです。義父が口から食べられなくなったのは、飲み込みにくい状態、つまり「嚥下障害」をそのままにしていたからです。
義父の、次のような症状に注意をはらうべきでした。
① 通常の食事が食べにくくなった。
② 薬を全く飲もうとしなかった。
①は、実際の食事の様子を見ていたわけではありません。私がよく義母に頼まれた買い物から、判断できます。
義母が、義父のために買ってきてほしいと頼んだのは、お寿司、サンドイッチ、アイスクリーム、プリンなどでした。
義父にとって、これらが食べやすかったようです。お寿司は、食べにくいネタは残していました。
②については、夫も私も、しばらく気づきませんでした。義父は昔から薬が嫌いだということは聞いていたので、薬を飲みたがらないのは当たり前だと思っていたんです。
ある時夫が、義父が薬を全く飲まないことについて、義母から相談を受けました(すぐには相談できなかったようです)。
夫は、義父の様子から、食べ物や薬がうまく飲み込めないことが理解できました。しかし義母は、薬が「飲めない」のではなく、「飲みたくない」のだと、ずっと思っていたようです。それはしかたのないことだと思います。
次に医師の診察を受ける時、薬を飲んでいないことを夫が正直に医師に伝えたところ、医師は、「薬の治療を受けられないのなら、もうここに来る必要はありません」と言い放ったとのこと(本心かどうかはわかりませんが・・・)。
そこで、薬局で相談したところ、錠剤を細かくくだいてくれることに。時間をかけて、義父の薬を用意してくれました。本当にありがたいことです。
やっとのことで、義父は薬を飲めるようになりましたが、それから間もなく、肺炎で入院することになりました。
【嚥下障害の症状と治療】
嚥下障害(飲み込みにくくなること)の症状としては、食べ物が飲み込みにくくなったという自覚(嚥下困難)や、食事の時のむせ(誤嚥)があらわれます。
嚥下困難の訴えがないとしても、食事の状態で判断することができます。
かたいもの、ぱさついたもの、まとまりのないもの、固形物と水物の混合したものは飲み込みにくいものであり、食べるのに時間がかかります。
高齢者の、飲み込みにくい、むせやすい、などの症状に気づいたら、まずはかかりつけの医師に相談してみることをおすすめします。
飲み込みにくい原因は、まずは加齢による嚥下機能の低下が挙げられますが、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、神経や筋疾患、心理的要因など、本当にさまざまです。
現在、嚥下障害の治療を行っている病院は、受診する病院は、耳鼻咽喉科、歯科、気管食道科、リハビリテーション科など、多岐にわたっていて、どの科を受診したらいいか迷うと思います。
まずは主治医に相談してみてはいかがでしょうか。
薬が飲みにくい場合も、やはり主治医に相談してみるのがよいと思います。薬を統合する、錠剤ではなく液体にするなど、何らかの対応をしてもらえるかもしれません。
【日常生活でできることをやろう】
まだ病院を受診するほどではないという場合、日常生活の中でできるリハビリもあります。
舌を動かす、頬をふくらませたりすぼめたりする、「パ・タ・カ・ラ」の発音をするなど、デイサービスやデイケアでは、口腔体操を取り入れているところも多いですね。
自宅でも、短時間でも行うことが望ましいとされています。それがなかなか難しいのですが・・・。
私はできているかというと、思い出した時に義母にやってもらう程度で、毎日は実践していません(義母の飲み込みについては、また別の機会に書きたいと思います)。
また、今までの食事が食べにくくなってきたのなら、食べやすい大きさや形状にする、滑りのよいものにするなどして、本人の負担を減らすような工夫をしてみてください。
【まとめ】
私の家族は、義父が食事や薬を飲み込むのが大変になっていたことに、何の対策も取りませんでした。気づいた時には、誤嚥性肺炎を繰り返し、その結果、経鼻経管栄養になっていたのです。
高齢者を毎日介護していると、飲み込みにくくなったことに気づかないかもしれませんね。本人が飲み込みにくさを訴えてくれればよいのですが、そうではないケースが多いのです。
食事に時間がかかるようになった、薬を飲むときの水の量が増えたなどから、食事中にむせるようになった、など、具体的な変化がないか、チェックしてみてください。
対策が立てられるうちに、少しずつやっておくことが大事です。
嚥下障害の治療を行っている病院が増えてきました。まずは主治医に相談して、どの科を受診するかを決めてください。
病院に行くほどではないという場合は、日常生活の中でできる口腔体操を取り入れてみてはいかがでしょうか。