高齢者は入れ歯を使用する割合が高いのですが、入れ歯が合わなくて困っているという人が多いようです。
私の義母は、ほとんど総入れ歯の状態です。入れ歯のことではいろいろトラブルを抱えており、現在は訪問歯科のお世話になっています。
ここでは、義母の歯の問題を振り返り、高齢者の歯のケアをどうしたらよいか考えてみたいと思います。
高齢者の歯のケアは早めに始めたい
義母の歯のトラブルや入れ歯の問題に直面して、高齢者の歯のケアは、本当に大変だというのが実感です。
こんなに大変なことになる前に、何か手を打てればよかったのにと思いますが、義母がまだ一人で何でもできていた時までさかのぼって悔やんでも、しかたがありません。
高齢になると、自分の口の中のケアがおろそかになる傾向になります。すると虫歯や歯周病になりやすくなるんですよね。
介護が始まった時には、口腔ケアを始めることが大事だと思います。私自身、これができていなかったので、後々大変な思いをしました。
義母の入れ歯問題の始まり
現在、義母は89歳。幼いころから虫歯になりやすく、初めて入れ歯にしたのは、比較的若いころだったようです(いつからとは、はっきり思い出せないのです)。
私が義母の介護に関わるようになった時には、すでにほとんどの歯がありませんでした。
4年ほど前のこと。
入れ歯が合わず、口を開けると上の入れ歯が落ちてくる状態なので、近所にある歯科に一緒に行きました。義母がずっと通っていたという歯科です。
そこで入れ歯を作ってもらい、何回か調整してもらいました。歯科医師に、もう大丈夫ですよと言われましたが、入れ歯はすぐに合わなくなりました。
入れ歯って、こんなにすぐに合わなくなるものなのでしょうか・・・?
歯科に連絡して、また行けばよかったのでしょうが、私にも仕事があり、義母の歯科にばかり付き添っていられません。
そのままにしていたら、今度は、突然、前歯が1本、抜けました。
前回の歯科に行くかどうか迷いましたが、今度は別の歯科に行きました。少し遠いけれど、評判のよい歯科です。
抜けた歯の部分の処理をしてもらい、今度はもっと合う入れ歯を作ってもらおう。そんな期待をしていましたが、その歯科医師に言われたのは、想像もしていないことでした。
歯科医に抜歯をすすめられた話
歯科医の見解は、以下の通りです。
・前歯が抜けた理由は、歯周病が進んでいたからである。
・現在、上の奥歯が1本、下の前歯が4本残っているが、きちんとケアがなされていないため、プラークや歯石がついていたり、歯周病が見られる歯もある。
・なかなか入れ歯が合わないのは、歯が少しだけ残っているからである。。特に上の入れ歯は、1本の奥歯のところから空気が入ってしまうから、ピタッと固定しない。
・すべての歯を抜いて、総入れ歯にすれば、合う入れ歯が作れる。また、残った歯のトラブルに悩まされずにすむ。
・持病(狭心症・高血圧など)があり、飲んでいる薬もあるので、抜歯については内科の主治医と相談して、慎重に行わなければならない。
歯科医師が抜歯をすすめる理由は、入れ歯の問題よりもむしろ、これから起こりうるトラブルを防ぐためでした。
このまま歯を残しておいたら、虫歯や歯周病が進む可能性があります。さらに持病がひどくなったら、歯科の治療を受けることさえできなくなるそうです。
残っている歯を全部抜く
そんなことが決断できるものでしょうか。
もちろんすぐに答えを出すことはできないので、歯の治療に通う間に決めるということになりました。
もっと時間をかけて医師と話し合うべきだった
義母の「歯を抜くのは嫌だ」という気持ちを尊重して、家族みんなで考えて出した結論は、「抜歯はしない。今残っている歯を、できるだけケアしていく」というものでした。
医師はしぶしぶ、入れ歯の調整をしてくれました。「すぐに合わなくなるかもしれないけれど」と言いつつ。
その歯科にはもう行くことはありませんでした。
あの時、歯をすべて抜くという発想が奇抜なものに思えたのですが、その後、義母の歯は、その医師の予言どおり、トラブルを起こしています。
もっと時間をかけて考えたり、医師と話し合ったりしていれば、よりよい判断ができたかもしれません。「歯を抜くなんて、考えられない」という気持ちをあらわにしたのは、義母よりもむしろ私の方でした。
訪問歯科医との出会い、そして抜歯
それから約2年。入れ歯がゆるくなり、口を開けると落ちてくるようになり、歯科医に通わなければならなくなりました。が、歩行がだいぶ困難になった義母を歯科医に連れていくことが無理です。
ケアマネジャーに相談したら、訪問歯科医を紹介してくれました。
歯科医師1人と歯科衛生士が2人、すべて女性です。こちらの話をよく聞いてくれる医師で、抜歯をしなかった決断を、それでよかったと言ってくれました。
義母の歯の状態は、2本の歯が虫歯になっていて、歯の根っこの方までダメージがあるので、抜いた方がよいそうです。そして、少し落ち着いたら、新しい入れ歯を作るとのこと。
内科の主治医に連絡してもらい、骨粗鬆症の薬と血液をさらさらにする薬をしばらく中止することに。
抜歯の当日は部分麻酔をかけましたが、体調不良などは起きませんでした。出血もそれほどひどくなく、ほっとしました。
2本目の歯も問題なく抜くことができました。
虫歯の治療と、抜けたところの回復を待って、やっと入れ歯を作るところまで、半年以上かかりました。やれやれです。
入れ歯ができあがるまでに、さらに時間がかかりました。
義母本人は、毎週あるいは1週おきに歯科医が来るので大変だったと思いますが、毎回つきあわなければならない私も、「いったいいつ終わるの?」と思いました。
義母の毎日の歯のケアを欠かさない
現在も、定期的に歯科医には来てもらっています。
それと、前歯3本のうち1本が、少し前からぐらぐらしています。これについては、抜くのではなく、様子を見ていて大丈夫とのこと。
今、私が毎日していることは、1日1回は、義母の歯をしっかり磨くことです。1日3回といのが理想的なのでしょうが、それは難しいので、1日最低1回としました。もちろん、可能な限り、歯磨きをしようと思っています。
下の前歯3本の表と裏を磨いたあと、歯間ブラシを使います。歯間にけっこう食べ物がはさまっているので、これは大事です。
義母は食事中、歯間にものがはさまるのが気になるらしく、よく途中で入れ歯をはずしてしまいます。歯間ブラシを当てるとすぐに取れるのですが、自分ではできません。
こういう場面に遭遇すると、あの時歯を全部抜いてしまっていたら、今こんな風になることはないのに、と思ったりもします。
義母の歯の問題につきあうようになってから、自分の歯も大切にしなければと強く思うようになりました。私は歯科が大嫌いなのですが、できるだけ間を空けずに行くようにしています。
義母のように、80代になってほとんど歯がないという状態にならないように、虫歯にも歯周病にもならないように、毎日のケアをしっかりやっていこうと思います。
義母の入れ歯の悩みについては、こちらにも書いています。
⇒ 高齢者の入れ歯が合わない悩み。義母は訪問歯科医に救われた
まとめ
高齢者の入れ歯は、ただ歯を合わせればよいという単純なものではなく、現在の歯の病気や考えられる今後のトラブルなどを含めて、よりよい方法を考えていかなければなりません。
まず、信頼できる医師に、こちらの意向をきちんと伝え、意思の疎通をはかることが大事だと考えます。
義母の場合は、残っている歯を抜くという歯科医の意見に、私や家族が同意できなかったことが問題でした。
もっとよく医師と話しあっていれば、後々の歯のトラブルを避けられたかもしれません。
しかし、今はよい訪問歯科医に出会うことができ、最善の方法で治療を受けられているので、これはこれでよかったと言えるでしょう。
毎日の歯のケアをしっかり行い、残された歯を健康な状態に保っていこうと思います。