高齢者のテレビ漬けは大丈夫なの?という悩みは多くの家族が抱えています。
家の中で過ごすことが多い高齢者にとって、テレビはなくてはならないものですが、ずっとテレビを見続けていると、心配になりますよね。
その人の認知症の有無や程度にもよりますが、家族は「こんなにテレビを見てばかりいたら、認知症が進むのではないか」という不安があるのではないでしょうか。
でも、脳が活性化するテレビの見方もあるんですよ。
それは、好きな番組を、楽しみながら見るということです。
私の義母のケースもご紹介しながら、高齢者のテレビ漬けについて考えてみたいと思います。
高齢者のテレビ漬けは認知症の原因にもなる?
70歳以上の高齢者はテレビを見る時間が長いという調査があります。でも、特別に見たい番組があるわけではなく、ただテレビをつけているだけ、という人も多いそうです。
1日に何時間もテレビを見ているのは、健康にも脳にもよくないとされています。テレビの前に座っていると運動不足になります。また、何も働きかけなくても画面が変わっていくテレビは、思考力を奪います。
テレビを長時間見ることは、認知症の原因になるとも言われているんです。
認知症の人のテレビとのつきあい方については、こちらの記事に書いています。
もし可能であるならば、高齢者のテレビを見る時間を、家族が管理してあげたらいかがでしょうか。いったんテレビを消してお茶の時間にするとか、散歩に誘ってみるとか、何か違うことをしてもらうのです。
あくまでも可能な範囲でのことです。
本を読むとか絵を描くとか将棋をするとか、何か好きなことがあればよいのですが、加齢とともに意欲が低下していくので、行動を起こすことができなくなるんですよね。
高齢者にとってのテレビの効能:義母の場合
義母に自分の時間が与えられ、好きなことができるようになったのは、夫を看取ってからでした。75歳の時です。
1日の大半を、本を読んだり新聞や雑誌のパズルを解いたり、テレビを見たりして過ごしました。
義母と私はよくテレビ番組の話で盛り上がりました。あのころは、義母はテレビによって脳が刺激を受けていたように思います。
テレビで好きな番組は、時代劇でした。高齢者が好む番組です。再放送の番組を夕方見て、夜は別の時代劇を見ていました。昼間やっている時代劇の映画も、時々見ていました。
ある時、「1日中時代劇をやっているチャンネルがあるから、それを見たい」と言い出しました。スカパーの時代劇専門チャンネルで、有料です。本当に朝から晩まで時代劇が見放題です。
家族はそれについて反対しました。いくら好きだといっても、時代劇でテレビ漬けになってしまったら、他に何もしなくなると思ったからです。
義母はそのころ、まだ一人で外に出たり、買い物もできました。料理も自分でやっていました。
時代劇専用チャンネルが見られなくても、義母が楽しめる番組は他にもたくさんありました。NHKの朝の連続テレビ小説、トーク番組、サスペンスドラマ、歌番組などです。これで十分だよねと納得してもらいました。
義母の希望をかなえてあげなかったことに対する後悔
義母は今でも時代劇を見ています。が、内容をどれだけ理解できているかわかりません。認知症がどんどん進んでいるのです。
今、毎日見ているのは、BSフジで午前8時55分時から放送している「人形佐七捕物帳」です。最近は、眠くなって途中で寝てしまうこともあります。集中して見ることができなくなっている様子です。
でも、時代激がどの番組よりも好きなのは、以前と変わりません。
義母に時代劇のチャンネルを見せてあげていたらよかったかな、と思うのです。今まで自分の主張をすることなどほとんどなかった義母が、せっかくやりたいことを見つけたのに、希望をかなえてあげなかった。そのことが今もひっかかっています。
そして、もしかして好きな番組を思う存分見ていたら、認知症がここまで進むことはなかったかな、なんて思うのです。夫にそれを話すと、そんなわけないと言われるのですが・・・。
高齢者の好きなテレビ番組とは?
NHKの調査によれば、高齢者が好んで見ている番組で最も多いのは、ニュース・報道番組だそうです。テレビに求めているものとして最も多かったのが、「世の中の出来事や動きを伝えてくれる」ことです。
これには驚きました。高齢になっても、世の中の動きに関心があるとは。でも、比較的頭がしっかりした高齢者に限ると思われますが。
私の周りの高齢者に人気がある番組は、時代劇、歌番組などです。朝の連続テレビ小説や料理番組を見ている人もいます。
高齢者にとっての時代劇の魅力
なぜ時代劇は高齢者に人気があるのでしょうか。
先日、伯母(母の姉)と従兄(伯母の長男)と会いました。伯母は毎日、時代劇チャンネルを見ているのだそうです。従兄と、高齢者にとっての時代劇の魅力について話しました。
・1時間の中で話が完結すること。
・ストーリーの展開があまり複雑でないこと。
・善人が悪人をこらしめるというお決まりのパターン。
高齢者にとってわかりやすく、すっきりした気持ちで番組を見終えることができます。途中で集中が途切れても、寝てしまっても、最後だけ見ればOKというのも、いいですね(笑)。
高齢者にとっての歌番組の魅力
次に歌番組ですが、若い人向けのものではなく、演歌や唱歌などのなつかしい歌が出てくる番組です。義母が好きなのは、BSプレミアムの「新・日本のうた」です。夕方やっている再放送の方を見ています。
知っている歌が出てくると、一緒に口ずさんでいます。その顔がとても穏やかなんです。
番組ホームページには、こんな説明があります。
日本人の心に深く残る歌の数々、多くの人々の支持を集め長年親しまれている「日本のスタンダード・ナンバー」ともいうべき名曲を紹介する、音楽番組です。
おすすめの番組ですよ。
高齢者はテレビで楽しむことができる
テレビを、高齢者に楽しみを与えるもの、脳に刺激を与えるものにすることは可能だと思います。
ずっとテレビを見続けているけれど、ほとんど頭に入っていない場合があります。「どんな内容だった?」とか「何が面白かったの?」などと尋ねることで、能動的にテレビを見ることができるのではないでしょうか。
私は、義母が歌番組を見ながら歌う歌について、「誰の歌なの?」「いつごろ流行したの?」などと聞きます。答えられないことが多いですけどね。
まとめ
高齢者のテレビ漬けは、望ましいか、そうでないか。
これについては、どちらとも言えないというのが結論です。
自分の好きな番組を、楽しく見ることができれば、脳は活性化します。逆に、受動的にだらだら見ているばかりだと、思考力が奪われていきます。
高齢者はテレビを長時間見る傾向にありますが、見る時間を制限したり、内容について話をすることで、脳も活性化するのではないでしょうか。
家族がある程度、番組やテレビの見方などを管理してあげることも必要かもしれません。
でも、家族が本人の相手ができないからこそテレビを見てもらう、という事情もあると思います。あくまでも無理のない範囲で。
テレビを活用して、本人も家族も楽しい時間を増やせたらいいなと思います。