認知症予防に計算が効果的だというのはよく言われていることですが、本当なのでしょうか。
脳トレの計算問題の本がいろいろ出ていますよね。認知症の人にそれを解いてもらったら、認知症の進行を遅らせることができるのでしょうか。
義母にも計算をやってもらいました。はたしてその効果は・・・?
認知症予防に計算が効果的な理由とは?介護の現場で楽しく計算を実践!
簡単な計算を解くことが認知症予防になる。また、認知症の改善にも役立つ。
この考えに初めて触れたのは、私がかつて勤めていた高齢者のデイサービスでした。そこでは「くもん学習療法」を導入していました。よく知られている、あの「公文式」を高齢者に向けて開発したものです。
私は介護職員として勤務していましたが、そこのデイサービスでは、希望者に「くもん学習」を提供するのです。内容は「音読」と「計算」で、その人に合ったレベルのものを選びます。
どちらも、簡単にできるものをやることがよいとされています。音読なら簡単に読める文章を、計算なら間違えずにすらすら解ける問題です。
答えが間違っていても×をつけず、もう一度やり直してもらって、すべて○になるようにします。
利用する高齢者と楽しく会話しながら、トレーニングを続けていきます。音読と計算をすることはもちろんのこと、雑談をすることも、脳を刺激するために必要なことだとされているのです。
まだ認知症の心配がなさそうな人もいましたし、認知症がかなり進んでいる人もいました。学習療法の効果は、正直、よくわかりませんでした。でも、皆さん、楽しそうに学習に参加していました。
その時間は、確かに脳が刺激を受けて活性化されていたのではないかと思います。
高齢者の認知症予防に計算を!義母の計算問題はノートに手作り!
「これはお義母さんにも使えそう。」デイサービスで高齢者に学習療法を指導してみて、すぐにそう思いました。
そこで、お金をかけずに学習療法をしようと、図書館で借りてきた本を音読してもらったり、計算ドリルを解いてもらったりしました。私が計算問題を作ったりしたこともありました。
週に2、3回を、3カ月くらいは続けたでしょうか。
こちらの根気が必要なのですが、私には根気も持続力もなく、義母の学習療法は、ごくたまに、思い出した時にやるという程度になってしまいました。
もともとパズルやクイズが好きな義母は、脳トレのドリルを渡すと、楽しそうに解いていました。ところが、認知症が少しずつ進んでくると、自分から進んで学習することはできなくなりました。
市販の計算ドリルだと文字が小さくて見えないので、私がノートに大きな字で書き、それを計算するということをやりました。
義母の認知症は、本当になだらかな坂を下りていくように、ゆっくり進行しています。現在でも、私が計算問題を作り、それを義母が解くというのは続けています。
問題数は20問。始めたころは、足し算はくり上がり、引き算はくり下がりもやっていましたが、今は難しいので、2、3問混ぜる程度です。
時々、かけ算もやります。義母はかろうじて九九を覚えていますが、6の段と7の段が苦手で、何か所かで止まってしまいます。できなかったらすぐに答えを教えて、一緒に九九を唱えます。
計算問題は、時々、大学生の娘に代わってやってもらいます。娘もコツをつかみ、義母をほめたりおだてたりして、楽しい学習タイムになっています。
認知症予防に計算が効果的だという理由は?簡単な計算を速く解く!
「くもん学習療法」とは、東北大学の川島隆太教授を中心とする研究グループと公文の教育研究所の共同研究において生まれたものです。
音読と計算を中心とした教材を用いた学習療法ですが、ここでは計算にしぼってお話ししようと思います。
川島教授は、小学生レベルの計算をすることに意味があるとしています。簡単な計算をすることによって、その他のどんなことよりも脳がたくさん働くのだそうです。
① 簡単な計算問題を解いている時
② 難しい計算問題を解いている時
どちらの方が脳が働くか、もうおわかりですね?
①の方が、脳の多くの場所が活発に働いているという研究結果があるんです。
さらに、次はどちらの方が、より脳が働くと思いますか?
③ 簡単な問題を速く解いている時
④ 簡単な問題をゆっくり解いている時
答えは、③です。計算問題を解く時は、できるだけ速く解く方が、脳がたくさん働くのだそうです。
すでに認知症が進んでいるので、簡単な計算も難しいという人もいるかもしれませんが、たとえば「2+3=5」という程度の計算なら、どうでしょうか。少しでも取り入れることができるのであれば、やってみたらいかがでしょうか。
義母は、5分前のことも忘れることがあります。今日が何日なのか、何曜日なのか、わかりません。でも、計算問題を解くのは好きだと言います。速く解くことはもうできませんが、それでいいと思っています。
認知症予防の計算というテーマで書いてきましたが、もしかしたら、学習療法は、高齢者よりもむしろ、介護している私たちにとって必要なものかもしれません。
私の夫は、自分の記憶力に自信がなくなったからといって、半年前から、計算を含む脳トレを始めました。そうしたら、人の名前がすぐに出てくるようになったと言っています。
そこで、最近になって、私も脳トレを始めました。結果は後日、報告しますね。
まとめ
認知症予防には、計算問題を解くのが効果的だとされています。
「くもん学習療法」は、川島隆太教授と公文式の共同研究において生まれたもので、小学生レベルの計算をすることの効果を説いています。
簡単な計算が脳の働きを活発にすることがわかりました。さらに、速く計算する方が、ゆっくり計算するよりも脳が働くそうです。
計算することは、高齢者の認知症予防のためだけでなく、もっと若いうちからやっておくと、脳の働きをよくすることで、認知症の予防に役立つかもしれません。