子育てと介護を同時にする「ダブルケア」を体験している人が増えてきています。
どちらか片方だけでも大変なことなのに、両方やらなければならないとしたら、相当な負担を強いられます。
ダブルケアの問題、あなたはどのように対処していますか?
【子育てと介護の両立、そして仕事、どうすればいいの?】
子育てと介護の両立、さらに仕事との両立で疲れ、ストレスをため、睡眠不足になり、体調を崩す人、また、精神的に不安定になって心療内科を受診するケースが多いそうです。
未就学児の子育てと介護を同時に行っている人は、全国に25万人以上いると推定されています(2017年8月現在)。
ダブルケアの当事者は、子育てと介護のどちらに優先順位をつけたらよいか、日々決断を迫られているといいます。どちらかを優先させた結果、後で悔やみ、自分を責めたりします。
さらに、仕事をしている人は、その両立にもまた悩んでいます。
ダブルケアを経験した人のうち、仕事を辞めたことがある人の割合は、男性が4人に1人、女性が3人に1人だそうです。離職率が高いですよね。
仕事を続けるのが難しいから、辞める。すると、経済的な負担が重くのしかかってくる・・・。ダブルケアが貧困の一因にもなっているという現実。
今、ダブルケアは、社会問題になりつつあるといえるでしょう。
【子育てと介護の両立に悩む人は、相談窓口に連絡を】
子育てと介護の両立に悩んでいる人は、どこに相談すればいいのでしょうか。まだ介護申請をしていない人は、お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談するといいでしょう。
地域包括支援センターは、介護申請するだけの場ではなく、介護者を支援することも行っています。
また、ダブルケアと仕事との両立に悩む人は、相談する前にすでに仕事を辞めてしまっている、あるいは辞めることが決まっているという人が多いそうです。
辞める決断をする前に、どのような介護サービスが利用できるかなどの相談を専門家にすることで、仕事を続けながらダブルケアを続けていく方法が見つかるかもしれません。
すでに介護サービスを利用している人は、担当のケアマネジャーに相談してみてください。
今の介護サービスの見直しをすることになるかもしれません。どのような援助があれば、介護と子育て、また仕事との両立が可能になるのか、いろんな案を提案してくれるはずです。
【ダブルケアの悩みを解決する試み】
一部の地域では、ダブルケアで悩む人たちの受け皿ともいえる活動が始まっています。
大阪府堺市では、2016年10月から、市内7つの区役所にダブルケアの相談窓口を設置して、育児と介護の両方の研修を受けた保健師や社会福祉士などが相談にのってくれるようになりました。
香川県でも、2016年4月~NPOが「ダブルカフェ」を企画し、ダブルケアの当事者たちが集まる場を提供しました。費用は無料で、だれでも気軽に参加できます。
介護に詳しい保健師と、子育てに詳しいNPOのスタッフが同席し、アドバイスをくれるそうです。
同じような立場にいる仲間と悩みを分かち合うことで、力をもらえるのではないでしょうか。
こんな取り組みが、全国的に増えていけばいいですね。
【私のダブルケア体験】
私が子育てと介護を同時にやらなければならなくなったのは、息子が小学3年、娘が幼稚園の年長の時でした。
義父は要介護2でしたが、義母にほとんど任せていて、私は買い物を頼まれる程度でした。ところが肺炎で義父が入院し、生死をさまよった時から生活が変わったんです。
私は夫と交代で病院に泊まることが多くなり、半年後、義父が退院してきた時には寝たきりの状態(要介護5)になっていたので、それ以降、毎日義父のお世話に通うようになりました(義父母の家は歩いてすぐの所にあります)。
毎日ヘルパーさんが来てくれましたが、ほとんどの時間は、義母と私でお世話しなければならず、精神的にもつらかったです。夫は仕事で忙しくて、頼ることができません(今思えば、それはおかしな話ですけど)。
一時期は子供と過ごす時間が減り、一緒に外出することもできない状況でした。
当時、息子は食物アレルギーで、食事のことも大変でしたし、娘は喘息で、学校を休むことも多く、何かと手がかかる2人でした。
私は、在宅の仕事を細々としていました。仕事の量はそれほど多くなかったとはいえ、まとまった時間が取れず、悩みました。義父が寝ている近くで仕事をしようと思ったけれど、集中できず、イライラしたこともあります。
私は義父に対してなかなか優しい気持ちを持つことができず、義務感だけで義父のところに行っていた時もあったことを、今は申し訳なく思います。
その時、私の周りには、子育てしながら介護している人はほとんどいなかったのですが、息子の同級生のママ友は、いつも私の愚痴を聞いてくれました。
ありがたかったのは、「子供たち、うちで預かるよ」と言って、遊ばせたりご飯を食べさせたりしてくれたこと。
そのほか、私たち家族を助けてくれたのは、サービス事業提供所の責任者の方とケアマネジャーでした。わからないことばかりの義母と私の質問に丁寧に答えてくれて、いろいろアドバイスをくれたことで、心強かったことを思い出します。
義父の死から今年で13年。息子は23歳、娘は20歳になりました。今では、義母の介護を手伝ってくれています。
【一人で抱え込まない】
あなたが頑張って、無理をして、倒れてしまったら何にもなりません。
本当につらい時は、誰かに助けを求めてくださいね。夫あるいは妻だけの負担が多くなっていませんか?「どうせ言ってもわかってくれないから・・・」ではなく、思っていることを、まずは配偶者あるいは身近な人に話してみませんか?
大変な時は、家事は手抜きでもいいと思います。スーパーのお惣菜を買ってくることもあっていいし、体が重かったら、「ごめんね。少しだけ寝かせて」と言って、横になることもあっていい。
とにかく、一人で抱え込むのはだめですよ。
【まとめ】
子育てと介護を同時にする「ダブルケア」に悩んでいる人が増えています。さらに、ダブルケアと仕事との両立に悩んでいる人も多いのです。
1人あるいは家族で抱え込み、体調を崩したり、精神的に不安定になったりする前に、専門家に相談してみてください。
お住まいの地域の地域包括支援センターは、介護申請のことだけでなく、介護者の相談にも乗ってくれます。
すでに介護保険を利用して介護サービスを受けている人は、ケアマネジャーに相談して、介護サービスの見直しをしてみてはいかがでしょうか。
一部の地域では、ダブルケアで悩む人を救う試みが始まっています。こうした動きは、今後さらに増えていくのではないかと思われます。